とんでもないアクションの連続。陳腐とか思わずにウィル氏を信じてご覧あれ!(笑)・・・(ジェミニマン)
・DNAを使ってクローン人間を作る。
・引退しようとしたエイジェントが、元の組織から狙われる。
と、全く新鮮味のないネタではありますが、監督は“ブローバック・マウンテン”“ライフ・オブ・パイ”でアカデミーを取得したアン・リー氏。しかも、製作は超著名なスーパーヒットメーカーのジェリー・ブラッカイマー氏と来ていますから、新鮮味があろうとなかろうと見ない手はありません。
ということで、これもかなり長い間待ちましたが、やっと見る機会に恵まれました。
予想通り、一見、陳腐な話を(すみません・・・)もの凄いアクションの連続で、2時間、見る者を飽きさせない内容に仕上げています。
しかし、主演のウィル・スミス氏は50歳越えで、あのキレっキレっのアクション本当に凄いです。映画の中で、ウィル自身が、もう歳だ、なんて自身を揶揄する場面もあるのですが、なかなかどうして、まだまだSUPER一線級です。(因みにウィル氏のクローン役は全てCGだそうで、その製作費用だけで彼自身のギャラの倍だったとか・・・)
同じDNAでも、育つ環境によって、全く違う人格になる(“エピジェネティクス”?)と、自分は思っていたので、今回の主人公二人の物語は、少々不思議と言えば不思議でしたが、まだまだDNAは判らないことばかりらしいので、そういうシナリオがあっても面白いなぁ、と思いました。
ぼーっと何も考えたくない時に見るには最適な、見ている間は全てを忘れさせてくれる1本です。
どんな人でも闇を抱えている・・・(アタラクシア/金原 ひとみ)
アタラクシア?って何?
(無知をさらけ出しているようで恥ずかしいのですが・・・)なんかの造語かな?と思ってネットで調べたところ、どうも元はギリシャ語の哲学用語で以下の記述がありました。
〘哲〙 他のものに乱されない,平静な心の状態。エピクロス学派が幸福の必須条件として主張したもので,幸福は快楽にあるが,外的なものにとらわれず欲望を否定した内的な平静こそが最大の快楽であるという。静安。
金原ひとみ氏の作品は昔、芥川賞を受賞した「蛇にピアス」を読んだきりで、それ以降は手にしたことはなかったのですが、書評に「いい!」と書いてあったのを見て、早速拝読。
「蛇にピアス」はスプリットタン(蛇みたいに割れた舌。舌ピアスの穴をすこしずつ大きくしていくことによってできる。)に憧れる主人公の話で、通常の人が住む日常とは全く異質な強烈な世界感を描いた作品でしたが、本作は、もっと身近な世界の話です。おそらく同じような世界に住む方も沢山いると思うのですが、実際に心の内をこれだけ分析して語れる人はまずいない筈で、金原氏は、そういった人間の内面を精密な文章で描くことにより、赤裸々なドロドロ感を見事に客観視していると思います。
主な登場人物は以下の6名。
由衣:元モデルで自身に究極に忠実。暫くパリに住んでおり、そこで瑛人と知り合う。現在はファッション関係の翻訳などをして生計を立てている。
瑛人:パリでの料理修行から戻り、自身のフランス料理店を友人と共同経営している。由衣と不倫中。
英美:瑛人の店で働くパテイシエ。分をわきまえない母親、浮気を繰り返す夫、問題児の息子の4人家族。常にストレスを抱えており、不安定な精神状態なるも、辛うじて踏み止まっている。
桂:由衣の夫。そこそこ有名な作家であったが、盗作疑惑で一気に仕事が無くなり、精神的にも作品が書けなくなる。由衣を若干変質的に愛している。
真奈美:由衣の友人の雑誌編集者。同じ会社の同僚と不倫をしている。夫は、過去有名なミュージシャンであったが、時代の波に取り残され、真奈美に暴力を振るうようになる。
枝里:由衣の妹。姉と全く相いれない性格で、もっとも付き合うのが苦手な人種だと思っている。ホストに純愛しているが、結局は振り回されており、援交で小遣い稼ぎをしている。
本作は何か、終わりがある物語になっているわけではなく、それぞれの、内面に抱えている闇、また他人をどう見ているのか、が語られます。
周りには勝手な性格と思われている、自身に究極に忠実な由衣でさえ、一見、思い通りに軽く生きているような真奈美の不倫相手でさえ、それは例外ではなく、様々な闇と対峙しています。自分の思うとおりに生きようとしても、生きられない世間で、快楽を追求しようとしても、追求できない社会で、如何に平静を得るのか?人間にとって闇とはやはり避けられないものなのか?そんな永遠の課題を投げかけられたような気がしました。
さらっと読むと、読み過ごしてしまいますが、一つ、「ゲッ!」という事実というか繋がりが出てきますので、その深い闇も是非、ご堪能下さい。(ご堪能というと言葉が悪いですね・・・。ご確認下さいに訂正いたします。)