徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

一見とんでもなくエログロですが、壮大な愛の物語とも言えます・・・(日本のセックス/樋口 毅宏)

f:id:Frikandel:20190625000650j:plain

題名が凄いです・・・。

自分は他人に「何を読んでんの?」って思われてもあまり気にならない方なので、ブックカバーとかはつけない派なんですが、流石にこれは表紙をひっくり返しました(笑)

この本を知ったのは、以下の本に紹介されていたからなんですが・・・。 

frikandel.hatenablog.com

八重洲ブックセンターの方がつけたポップがとっても強烈です。

どこまでも暗黒!ひたすら邪悪!なのにこのカタルシスはなんだ!?日本文学会に咲いた毒の花・樋口毅宏が放つ、「或る女」の疾風怒濤の一代記!あまりにもなタイトルと、官能小説然とした出だしに臆することなかれ。かつてない読書体験をお約束します!今年の小説ベストワン絶対確定!

 

冒頭は以下の引用で始まります。

f:id:Frikandel:20190624222613j:plain

僕自身は、レアージュの「O嬢の物語」は読んだことはないのですが、「とっても、文学的だなぁ。その気持ち、なんとなく判らないでもないなぁ・・・。」と感嘆し、きっと本作も題名とは裏腹に真面目な本だろう、とゲスしたのですが、とんでもない!ページを捲って後悔・・・。(笑)

恐ろしく なってしまう程、エログロな作品でした・・・。

佐藤はカンダウリズム・マニア。その妻である容子は、どこか冷めたところがあるも頭脳明晰で大変な美貌の持ち主。佐藤に引き込まれ、容子はマニアの世界にみるみるハマって行く。羞恥心から生じる快感を追及し、徐々に無くなる理性の境界線。辛うじて羞恥心の世界に留まっているが、快楽と狂気の世界を行ったり来たりしているうちに、羞恥心から生じる快感と暴力から生じる快感の一線を越してしまった仲間が暴走、事故(犯罪?)に巻き込まれる。
心身共に深い傷を負う容子。再度佐藤の手引きで、よりソフトな形で羞恥心の世界に帰って来るが、とんでもない状況に巻き込まれ、二人の人生は大きく変わって行く。

前半は、正直「いつまで、このスーパーエログロな描写が続くのだろう?これじゃぁ、ただの変態小説じゃないか!!!???」と若干我慢して読み進めるも、描写は更にエスカレート。しかしながら、ある時点を境に唐突に静かになり、更に意外な展開を見せ始めます。前半がどちらかというと肉体的な物語なのに対し、後半は精神的な物語とでも言えばいいのでしょうか?

最後に走馬灯のように語られる、容子の周りに居た人々の言葉に強い印象を受けました。(要約)

「所詮男なんて生き物は、戦争がなかれば威張れない生き物なのだと思います。強い男なんて見たことがないし、弱い女なんて見たことがない。」

「農家の5人兄弟の四男坊として生を享けた。父親には温かい言葉を掛けられたより殴られた回数の方が多い。自分の世代は皆そんなもの。それが当世は、何で皆、血眼になって愛とかを求めるのか?腹が減っていないからか?ビ-トルズとかいう連中が悪い。”愛こそすべて”?それを真に受けるバカが世界中にいる。」

「いつだって大事なことは今日しかない。過去は頼りにならないし、未来を語るのは単に卑怯者がやること。何故なら、歴史が何か教えてくれると言うのなら、世界中の紛争はとっくに無くなっている。天気予報ひとつ満足に当たらないのに、輝くような明日があるように話すのは、この世で最悪の欺瞞。だから今日しかない。人は毎日、毎日その日を生きるしかない。この先辛いなぁ、生きていることがしんどいな、と感じたら、その日の事だけを考えて生きろ。それを実行する人にしか明日はやってこない。」 

一見とんでもなくエログロな作品ですが、突き抜けた人だけが知ることのできる、深い愛を描いた物語だと思いました。 

本作は、意外なことに女性の方の評価が高いようですが、誤解されるリスクを冒してまで、自分から女性には薦められないかなぁ。(笑) 

日本のセックス (双葉文庫)

日本のセックス (双葉文庫)