うげーぇ。往年の龍先生の作品は流石にグロい(笑)・・・オーディション/村上 龍
往年の龍先生が「俺はなんでも書けちゃうし、小説ならトレンドも作れちゃうぜ。」と思っていたかどうかは判りませんが、油が乗り切っていた時にお書きになった作品です。
先生は物書きとしては超一流ですが、映画では残念ながら、そうはなれずに赤字垂れ流しをしてしまいました。自分は勝手に「だいじょうぶマイフレンド」(1983)という映画でこさえた巨額赤字を返済することがモチベーションになって、それが先生を大作家に育てた?と思っています。(すみません・・・笑)ちなみに、この映画は、なんとイージーライダーのピーター・フォンダ主演にも関わらず、(先生が彼に深く憧れていたのは判りますが・・・)彼にとんでもないことをさせています・・・。
閑話休題。
なんでも書きまくっていた?からか、本作は、あまり文学性はなく、どちらかと言えば単なるサイコホラーものと言ってもいいかもしれません。ただし、そこは流石に龍先生、そんじょそこらのホラーとは比べものにならない位、戦慄します・・・。
青山は妻に先立たれ、息子と二人暮らし。バブル期に作ったビデオ制作会社を経営している。ある日、息子に「再婚でもしたら?」と言われたことから、再婚を意識するように。友人に相談したところ、架空の映画のヒロインを募集するオーディションを開催し、その中で探してみたらどうか?との提案を受ける。青山は、正直、あまり乗り気ではなかったが、一通の審査書類から目を離せなくなる。自己紹介に「ずっと自身の最優先事項だったことが突然崩れるのは、死を受け入れることに似ている。」と、正に青山にも経験があることが記載されていたこともあり、すっかり彼女に惹かれてしまう。彼女に恥も外聞もなく夢中になってしまう青山。その先に待っていたものは・・・。(怖)
先生は若者対しては結構寛大で、総じていつも高い評価をしており、(決して、近頃の若い奴は・・・とか言うタイプではありません。)本作にも、相対的なアクセントとして非常にしっかりとした若者が出て来ます。この小説は本当に怖いんですが、それが唯一の救いでしょうかね・・・?