徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

映画「ひろしま」を視聴して・・・。

独立プロ名画特選 ひろしま [DVD]

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8月17日(土)午前0時からEテレでひっそりと映画「ひろしま」が放映された。

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/92972/2972455/index.html

自分自身はこの映画の存在も放映されることも知らなかったのだが、自分が映画好きなことを知っている先輩が連絡をくれた・・・。

先駆けて、ETV特集「忘れ去られた”ひろしま”~8万8千人が演じたあの日~”」を見たこともあり、自分の中の震憾度は、ここ最近ちょっと無い位に振りきれてしまった。

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259675/index.html

自分にとって映画とはあくまで浮世(憂き世)から現実逃避する手段であるのだけど、この映画は否が応でも現実と向かい合わされる辛い一本であった。

まず、本作はなんと実際に広島に原爆が落とされた8年後の1953年に創られたことに驚いた。まだまだ復興の最中でやっとアメリカから主権を回復した翌年である。そんな時に、原爆投下という事実を風化させないという一心で創られた一作。それだけでも驚愕の事実であるのだが、この作品の製作をしていることを知った広島の市民達が、皆協力したいと言い始め、2万強と言われるエクストラが集まり、その為にラストシーンを書き換えたそうだ。(関係者は最終的に実に8万8千になったそうです。)映画自身も見ているのが辛い位悲惨だが、実際に被曝を経験、その上で出演に協力した女性は、「実際の状況はこんなものではなかった・・・。人間の体はこんなになってしまうのかと云うほど悲惨を極めた、経験したものしか、あの凄惨さは判らない。」と述べていた。この女性は、映画を撮っている時に、その時の状況を思い出して、あまりにも辛くなり吐いてしまったそうである。

しかも最終的に製作を引き受けてくれたのは日教組。(よくは自分も知りませんが、この組織も国の日和見的な政策により、ある意味不幸な歴史を持った組織ですよね。)組合員が50円ずつカンパして(物価等を考えると感覚として2-3,000円いかない位?もっとかな?)製作費を捻出したとのこと。出演者の広島出身の月丘夢路も自分の所属会社に何度も何度も交渉し(当時は事務所などなく、自分の所属会社の映画にしか出演できなかったそうです。)手弁当で参加。

皆の想いが正に詰まった映画となった。

が・・・公開直前に反米的だという点が指摘され、政府やGHQに忖度した配給会社が二の足を踏みなんと日本で上映することはなかった・・・。

唖然である。

よって、本作は事実上のお蔵入りとなった。

それから何十年も経ち、徐々に日の目を見ることになった訳だが・・・。

会社も、国も、組織と云う奴は、皆心の底から同じ方向を向いている時はあまり変な事は起きない。ただし、調子が良くなって、皆に余裕が出てくると、いろんな事をいう輩が出てきて、今度は調子が悪くなり、そこを打破する為に声の大きい人間が勝手にリーダーを名乗り、道徳的におかしいのでは?と思う事を超法規的だとか、緊急避難的にとか、あらゆる言い訳をして、一つずつ踏み越えてしまい、最後は引くに引けないところまで持って行ってしまう。そして争いが起きる事になる。1956年の経済白書で「もはや『戦後』ではない。」と言われてから既に63年。便利にはなったけど、我々の精神は何も変わっていないというか、退化しているのかもしれない・・・(こんなこと言うと、だから日本は世界で戦えないんだよっ!って言われると思うけど。 笑)

毎年、毎年、戦争の記憶を風化させてはいけない、という風潮が大きくなっているのは、きっと皆の心の奥に、戦争がまた起きるかもしれないという漠然とした不安が大きくなっていることと無関係ではないと思う。あんな悲惨なことは、もう起こさない。と皆思っていても、未だに世界では戦争は起きている。一握りの誰かの利益の為に・・・。

勿論人間はそれでも前に進まなくては行けない。ただ戦争なんていう、愚かなツールを使うことなく、人間にしかない知恵と理性をうまく使って前に進むことを願うのみである。

これは後日談ですが、原爆を落としたのがアメリカなら、この作品のデジタル化のスポンサーをしたのもアメリカ。(日本にはスポンサーをしてくれる企業などなかったそうです・・・)アメリカと云う国は問題も多々ある国だが、そういった意味ではやはり、懐が深い、とんでもない底力を持った国であると思う。

 冒頭でオリバー・ストーン監督がmust seeと何度も言っていたが、関係ある人も無い人も人類が起こした責任として一度は見ておくべき作品だと思います。