外食産業に賭けた、ある男の凄まじいまでの生き方。(外食王の飢え/城山 三郎)
本作は1982年に刊行、外食チェーンROYALの創業者、江頭匡一氏をモデルにした小説です。福岡ベースのROYALは売上高約1,300億、営業利益率4.1%(2018年度)。現在は、今や誰でも知っている「ロイヤルホスト」、他にも「てんや」、「シズラー」、「シェーキーズ」、「ピンクベリー」などのチェーン店や航空会社のケータリング、ホテルの運営等を手掛けているようです。株価2,740円(10月4日)配当29円予定。その他に100株所持していれば1,000円のロイヤルお食事券が貰えるようですので、配当利回り約1.5%の押しも押されぬ大企業です。
そんな会社を1950年に設立したのが江頭氏であり、氏をモデルに城山三郎氏が脚色して小説にしています。
江頭氏は既に鬼籍に入られておりますが、過去、日経の「私の履歴書」に掲載されたことがあり、それを読む限り、氏は背景は似ているものの、主人公は全く自分とは似ても似つかないと、当時は本作には特に興味をお示しにならなかったようです。
倉原礼一は九州のエリートの家に生まれるも、エリートになりきれず、何か大きな事をしたいと常に思っていた。持ち前の人懐っこさで、まず米軍基地のコックとなり、その伝手で売店の調達商人となるが、当時の為替レートでは幾ら頑張っても儲からず、夜逃げ寸前となる。そんな時に為替が突然270円の大円安となり、大儲け。一気に事業が軌道に乗り始める。その後、朝鮮戦争による特需、パン屋、アイスクリームの成功と事業を拡大。銀座で入った店に感銘を受け、地元福岡に本格的なフレンチの店も開店、新婚旅行で福岡を訪ねたマリリン・モンローの来店で一気に全国区となる。しかし、ワンマン経営な上、拡張に次ぐ拡張で、社員も徐々について来れなくなり、遂には各店舗の味を創っていたコックも反旗を翻し始める。
自身も、外での極端な食べ歩き、また、必ずメニューに載せるものは全部試食をしていた為、それが祟り体を壊し、胃を切ることに。医者にも、このままでは50歳は迎えられないと宣告されるが、それでも倉原の野望は止まらない。そんな時に東京で勢力を伸ばして来たのが同業者「サンセット」。倉原とは全く別な正反対の手法で急激に成長しているという。居ても立ってもいられなくなった倉原は、彼らを迎え撃つべく、東京に進出を考え始める。果たして倉原は勝利を収めることができるのか?
ちなみに後半に出てくる「サンセット」は「すかいらーく」がモデルになっているようです。小説では、倉原が超ワンマンでブルトーザーのように事業を推し進めて行くのに対し、「サンセット」の創業者である3人は非常に腰が低く、合理的且つ慎重な理解ある経営者に描かれていますが、実際の結果は皆さまご存知の通り・・・。著者の城山三郎氏も時代の波までは読みきれなかった?(笑)まぁ、氏は「これはあくまで小説ですから。」と生前、江頭氏にも度々強調していらしゃったようですので・・・そういう事まではお考えにはなってはいなかったとは思いますが・・・。
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