と、あるスナイパーの人生・・・(白い死神/ペトリ・サルヤネン)
冬戦争で「白い死神」と恐れられたスナイパーのお話。
ちなみに冬戦争と云うのは、世界史で習ったような気もしますが、第二次大戦が始って直ぐにソ連が国境を接するフィンランドに侵攻した戦争です。圧倒的な戦力を持っていた筈のソ連に対し、フィンランドはよく凌いだものの最終的には被害の拡大を恐れ、国土の約10%を割譲すると云う屈辱的な条件で講和条約を結んでいます。この戦争でソ連側の損害は12万人強、フィンランドは2万人強の尊い命が失われたと言われております。
本作は、その冬戦争の英雄、シモ・ヘイヘ氏の伝記となります。
スナイパーなんて言うと古くはゴルゴ13(笑)トム・ベレンジャーの「山猫は眠らない」、ジュード・ロウの「スターリングラード」、フォーサイスの名作「ジャッカルの日」、最近でこそ「ザ・シューター」とか「アメリカン・スナイパー」なんて作品でも有名になりましたが、市井の人とは最も遠い世界のお話の住人で、想像すら難しい人達です。
因みに現在の狙撃の最高記録は3,540mだそうです。
なんと3.5km!、もう彼らに狙われたら、防ぎようはありませんね。奇跡的に気付いたとしても、その時は既にあの世に行っているレベルです。
スナイパーは少ない経済性で、相手に大きな打撃を与えられるので、(師団を導入せず、遠方から一発で指揮官を倒してしまうのがよい例)莫大な資金が掛かる戦争では非常に重宝されるようです。よって、現在の軍隊はスナイパーを意識して、兵士と士官は同じような服装、将校も極力目立たないように装うのが世界標準になっているとか・・・。このことからも、それ位スナイパーは恐ろしい存在と見なされていることが判ります。
現在もフィンランドの博物館には彼の使ったモシン・ナガンというライフルが展示されているそうです。
これ↓
しかも、驚いたことに、彼はスコープなしで450m以上の距離からも狙撃できた、とのことなので、現在の技術の粋を集めたスナイパーライフルなんかを使っていたらどうなっていたのでしょうか・・・。ちなみに先述の最高記録を持っているMk15というのはこんな奴なので、隔世の感がありますね・・・。
なお、本作には、第二次世界大戦に女性のスナイパーなんていたんだ・・・と非常に興味を覚え、何か彼女に関して書いたものないかな?と探していた最中に出会いました。彼女の名前はリュドミラ・パヴリチェンコ。ロシア人で、これまた戦争の英雄だそうです。次は彼女のことを書いた本を読んでみたいと思っています。
特に自分は武器とか戦争に特別な興味がある訳ではありませんし、こういったスナイパーを始め、仮にも人や生き物を傷つけるようなモノは、無いに越したことはないと考えていますが、不謹慎を承知で述べるとすると、自分の想像では遥かに及ばない、そういった人達の生き方とか、考え方、また時に襲う苦悩等は一体どんなものなのだろうか?と、なんだか無性に知りたくなってしまい、この本を読んでしまいました。あまりいい趣味ではないと判ってはいるのですが・・・。