徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

じんわりと温かい「ほっ」と、元気を貰える作品。こんな店に自分も行きたい。(東京すみっこごはん/成田 名璃子)

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とっても、ほのぼのとした作品でした。作家の成田名璃子さんは、ライトノベルの登竜門である電撃大賞の受賞で有名になった方です。電撃大賞は賞金300万円、1994年から始まった比較的あたらしい賞で、今年で第26回目を迎えます。小説だけでなく、イラストと漫画部門もあり、有名な受賞者の方には、図書館シリーズ有川浩さんがいらっしゃいます。彼女は「塩の街」という小説でこの賞を獲得しました。 

楓は、ふとしたことから、女子の輪から外され、いわゆるイジメに合い、日々悶々と過ごしている女子高生。相談しようにも両親に早く先立たれ、現在は祖父との二人暮らし。ある日、居場所がなくなった彼女は、とぼとぼと歩いているうちに奇妙な雰囲気の食堂に行き着きます。看板には「共同食堂 すみっこごはん ※素人がつくるので、まずい時ももあります」の記載が・・・。不思議に思って、中をうかがうと、突然、「まだ空きがあるから入れ。」と中に招き入れられます。幸運な事に今日の料理当番はプロの料理人のカネコさんとのこと。「怪しい、いけない。」と思いながらも、あまりに美味しそうな香りに誘われ、食べてから考えよう!と舌鼓を打つことに・・・。

その食堂のルールとは、「台所に立つのは基本的に一人だけ。当日集まったメンバーがくじ引きをして、料理当番を決める。初回のみ、お米、調味料代として1,000円。後は当日の材料費300円程度。」不思議な雰囲気に誘われ、彼女はその食堂に通い始めます。

主なメンバーは料理人の金子さん、主婦の田上サン、市役所勤務の丸山さん、OLの奈央、柄の悪い謎の男柿本。彼らと楓を中心に、皆の訳あり人生が交差していきます。最後は「あっ!」と、言う展開で意外な事実も・・・。

じんわりと温かい「ほっ」と、元気を貰える作品でした。

既にシリーズ化され、現在は4巻まで発刊されているようですし、wowwowでドラマ化もされているようですね。 

真田vs宮沢程の派手さはないけど、あったかい、地味にいい感じの作品です。(隠し剣・鬼の爪)

隠し剣 鬼の爪

隠し剣 鬼の爪

先日見た。「必死剣鳥刺し」が、中々面白かったので、これも見てみました。

鳥刺しは鹿児島なんかで食べる鳥の刺身を連想してしまいましたが、これはなんだが鷹の爪を連想してしまう、まさかの食べ物繋がり・・・。ただし、内容は勿論全く食べ物とは関係ありません。(笑) 

frikandel.hatenablog.com

主人公は、つましいながらも幸せに暮らす下級武士。かつての女中が嫁ぎ先の油問屋の大店で幸せに暮らしていると思っていたにも関わらず、実はひどい扱いを受けて、体を壊していることを知る。いてもたってもいられず、女中を無理やり連れて帰る主人公。看病の甲斐もあり、女中は回復、噂になりながらも昔通りの生活が始まる。

そんな時に、主人公の親友が謀反を起こし、脱獄。上役より彼を斬るように厳命される。親友はかつて同じ師の下で剣を学んだ兄弟子で剣の腕は上。但し、主人公は隠し剣という秘技を師より授けられ、親友はそこで師とは袂を分かち、出世を求め江戸屋敷へ。

親友と主人公の対決はどうなるのか?女中との行く末は・・・。そして秘儀、隠し剣とは・・・。

幕末に起きた藩の謀反に巻き込まれながらも、愛を貫くラブストーリー。 

同じ藤沢周平原作、山田洋二監督の2作目にも関わらず、前作「たそがれ清兵衛」にかなり似た内容なのは、二匹目の泥鰌を狙ったのか?それとも「男はつらいよ」のようなシリーズ化を狙ったのでしょうかね???(笑)

ちなみに、海坂藩という背景も一緒。中間も双方共に直太と言う名前で、同じ神部浩さんが演じています。

f:id:Frikandel:20190802021409j:plain←神部浩さん

たそがれ清兵衛」は戊辰戦争に関しての言及があったので、1860年前半のお話、本作はまだ北海道を蝦夷と言っていることから、(1869年に北海道に改称)同じ位の時代とは思われるものの、感じとしては、「たそがれ清兵衛」より少し前の話のような気がします。しかし架空の話としても、こんな大事件を同時期に二つも起こした海坂藩はさぞや大騒ぎだったでしょうね・・・と思っていたら、キムタクが主演した「武士の一分」も同じ頃の海坂藩のお話でした。こりゃ大変だ!(笑)

決して明るい内容ではありませんが、読了後、一筋の光が見えるような、そんな作品です。(蛇行する月/桜木 紫乃)

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桜木紫乃女史は著名な直木賞作家なので、一度読んでみたいと思っていたのですが、何故か今までチャンスがありませんでした。

この人は不器用でも一生懸命生きている女性を本当にうまく切り取る人だなぁ、という印象を受けました。本作は高校の同級生のグループを中心とした女性達の生き様を赤裸々に語っているのですが、見事なまでに表裏を描き切っていると思います。代官山蔦屋書店の文学担当の間室道子さんと言う方が解説の中で面白いことをおっしゃっています。

男性を中心にした小説は目的を同じくした時に登場人物の男性達はグループになり、友情→裏切り→和解→団結と話は進むのに対し、女性のグループ小説はぐちゃぐちゃで、陰口を言いながらも一緒にいることを望み、同じ目的に向かう時も思いはバラバラ、友情と裏切りと団結が常時混沌としている。(あくまで、こういうのが小説のネタになるという話で、現実もそうだとは自分は考えておりませんので、悪しからず・・・。)

まさに、本作はその後段的な作品だと思います。

「清美」、「桃子」、「美菜恵」、「直子」、順子はかつて道立湿原高校の図書部に所属した同級生。現在は、「清美」は酌からコンパニオンもどきまでさせられる場末の宴会ホテルの営業職。「桃子」はカーフェリーの乗務員で不倫中。「美菜恵」は学校の教師で嘗ての担任と結婚予定。順子は和菓子屋に勤務したものの、その店の女主人の夫である20歳近く年上の餡練り職人との間に不義の子ができてしまい駆け落ち。

彼女達に加え、順子の母の「静江」。駆け落ちされた女主人の「弥生」。彼女達「6名」が、それぞれ年代を追って、順子との関係を通し、各自の人生を語ります。

人生とは何なのか?男とはなんなのか?幸せとはなんなのか?

 

決して明るい内容ではありませんが、読了後、一筋の光が見えるような、そんな作品でした。

そのうち女史の代表作、「雪虫」と「ラブレス」「ホテルローヤル」あたりも読んでみたいと思います。

でも題名は何故、蛇行する川じゃないんですかね・・・?月イコール女性ってことなのでしょうか?