久方ぶりの純文学!?ほとばしる書き手の鬱屈感・・・(苦役列車/西村 賢太)
芥川賞の受賞インタヴューで「そろそろ風俗に行こうかな?と思ってたので。」とコメントして有名になった著者の作品です。
受賞後のインタヴューで物議を醸したのは、この人と田中慎弥氏ぐらいだったと思います。144回の受賞者が著者で、145回は該当なし、146回が田中氏なので、(田中氏はなんか物凄く怒っていて、「くれるなら貰っておいてやる」みたいな態度でした・・・)最近の芥川賞受賞者はぶっとんだ人ばかりだなぁ、とびっくりしたことを思い出します・・・。
今更ですが、芥川賞って何?直木賞との違いは?ってことでちょっと日本文学振興会のホームページを調べてみると、以下のQ&Aがありました。
A. 芥川賞は、雑誌(同人雑誌を含む)に発表された、新進作家による純文学の中・短編作品のなかから選ばれます。直木賞は、新進・中堅作家によるエンターテインメント作品の単行本(長編小説もしくは短編集)が対象です。
因みに、日本文学振興会とは、各種文学賞の授与を行ない、文芸の向上顕揚を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする公益財団法人だそうです。各種文学賞とは、芥川賞、直木賞、菊池寛賞、大宅壮一ノンフィクション賞、松本清張賞とのこと。
世の中には本当にいろんな団体があるものですね・・・。
著者は芥川賞を受賞したとのことですので、本作は純文学というジャンルに入ると思います。最近はどちらかと言うとエンタメ性の高い小説ばかりで、対して、ニキビ面の青春時代は、訳も無くイライラしながら太宰治、三島由紀夫など、むさぼるように読んだ記憶があるだけに、純文学と言うと少し構えてしまい、なんだか緊張しての読書となりました。(笑)
本作ですが、言葉遣いが独特です。カタカナが結構出て来るかと思いきや、意味さえ分からない古い感じの言葉遣いも多く、かなり調べてしまいました。
いきなり冒頭の文章が、
「曩時北町貫多の一日は、目が覚めるとまず廊下の突き当たりにある年百年中糞臭い共同後架に立ってゆくことから始まるのだった。」
なのですが、曩時って何?もしかして曩時北町って名前??後架って何?
曩時(のうじ)とは昔とかさきの時とかいう意味で、後架(こうか)はトイレのことらしいです。いやー、先が思いやられると思ったものの、後は案外最後まで、結構スイスイ読めました。(もちろん言葉を調べる為に何回かグーグルしましたが・・・)
内容はうーん、ほとばしりますね~。書き手の鬱屈した気持ちが、ギンギンに読み手に訴えて来ます。
著者はまさに、あの見城徹氏が言う「小説家には、書かなければ救われない、何かがある。上手くても下手でも強い祈りが込められ、膿んだ傷の感触がある。癒すことのできない痛みがあるから、表現をする。彼らは、自分の内部から滲み出る、やむにやまれぬ気持ちを作品化している。」に当てはまると思うのですが、幻冬舎からは一冊も作品を出していません・・・。
西村氏は見城徹氏が言う作家にぴったりな気もするのですが、きっと、(これは勝手な想像ですが、笑)見城氏は脆くて壊れやすい内面が細い感じの商業ベースの天才が好きなんじゃないかな?と言う気がします。西村氏も紛れもなく天才だと思いますが、脆くて壊れやすい感じの天才では全くなく、どちらかというと決してへこたれない、商業ベースなんて糞喰らえ!的に内面が太い人に見えるので、見城氏とは合わないのかもしれませんね・・・。(笑)
いずれにしろ、久しぶりの純文学、なんだか胸がいっぱいになりました!ごちそうさまでした!
うーん、あまり見たことのないジャンルとでも言えばいいのでしょうか?好き嫌いは判れるでしょうね・・・(西城秀樹のおかげです/森 奈津子)
「題名買い」(内容を全く知らずに題名だけで本を購入してしまうこと)と言うのは本好きであれば、必ず一度や二度は経験があると思います。自分に取って、まさに本著は文字通り「題名買い」の一冊であります。
「西城秀樹」と言えば押しも押されぬ昭和のスーパースター(アイドル?)。昭和、平成、令和と3時代経ても、彼の代表作”Young Man”の曲を聞いたことがない、という人は殆どいないのではないでしょうか・・・?
AMAZONの評価も☆4つ。瀬名秀明氏推薦の帯も強烈。筆者はきっと西条秀樹の大ファンで、きっと何か西条秀樹の支えがあって、凄いことをやってしまったのかも・・・と、否が応でも期待が高まります。
で、早速読み始めると・・・「んんん???なんじゃ?」面白くないことはないのですが、相当な下ネタ本。満員電車で隣の人には決して覗かれたくない種の作品でした・・・(笑)
一体、著者の森奈津子氏ってどんな人?と思って、その場で直ぐに調べてみたところ、
女性小説家。日本SF作家クラブ及び宇宙作家クラブ会員。女性護身術団体、パラベラム協会代表理事。ご自身がバイセクシュアルであることを公言。作品はコメディタッチのものからシリアスな恋愛小説、SF、官能小説、ホラー、児童文学まで幅広いジャンルに渡っているが、セクシュアリティをテーマにした作品を数多く発表している。
とのこと。
小生は、著者のことはこれまで殆ど聞いたことがなく、いろいろネットサーフィンもしてみましたが、今は、あまり表に出る事はなく、主にnoteとtwitterでご活躍している方で、稀に、そのご発言で炎上なさっているようでした。
本作を読む限り、タブー等は一切なく、自由奔放に何でもお書きになっている感じを受けました。きっと至極自身の欲求に素直で、思いの強い方なのだと思います。誰か読者層を設定しているのではなく、書くことによって、自分の思いの丈を吐き出していらっしゃる、そんな気がします。読んだ時は、これはなんというジャンルの作品なんだろうか?と考え込んでしまいましたが、そういう意味では紛れもない文学作品なのかもしれません・・・。
で、結局この本、何が書いてあるの?
「西城秀樹と下ネタ???」
恐らく皆さま全く繋がってこないと思いますが、これは実際に読んだ人にしか、理解できない作品かと・・・。好きか嫌いか、確実に別れるであろうし、好きな方は熱狂的に好き、理解できない人は200%嫌悪するかも・・・そんな作品です。と、いうことで、今回は内容は語らないでおきますが、強いて云うのであれば、エロファンタジーコメディ短編集??ですかね・・・?
ご興味湧きましたか???
うーん、でもお薦めはやっぱりしないかなぁ(笑)
肩の凝らない天才歌人のエッセイ・・・(もうおうちへかえりましょう/穂村 弘)
穂村弘氏。この本を読んで、著者は肩の凝らない天才だと思いました。
言葉の使い方とか発想が、独特で唸らざるを得ない。
何をやっている人物かというと、なんでも「ニューウエーブ短歌」という分野の草分けらしい。
「ニューウエーブ短歌」??
現代短歌と言うと、
「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日
の俵万智位しか浮かばないけど、どうも、ニューウエーブ短歌は、もっとイメージと感性で歌い上げるものらしい。
Wikiによると、穂村氏の他に、加藤治郎、萩原裕幸と云った大御所がいるらしいけど、申し訳ないことに全く知らん・・・。
言葉では/ない!!!!!/!!!!!/!!!!!!!/!!!! ラン!
萩原裕幸
それはだって結局つまりうるさいな毎晩ちゃんと抱いているだらう
ほんとうにおれのもんかよ冷蔵庫の卵置き場に落ちる涙は
なんか、いい感じ。
木下龍也という人は、彼らよりかなり年下みたいだけど、下の歌なんて、簡単で凄くグッと来る・・・。
立てるかい 君が背負っているものを君ごと背負うこともできるよ.
と話が横道にかなりそれてしまったけど、本作は、ニューウエーブ短歌の巨匠、穂村弘氏が書いたエッセイ集です。はっきり言って、この本を読んで賢くなることもないと思うし(すみません)、何か役立つことが書いてあるかというと、それもない。でも、読んでて、ニヤっとしたり、うーん、それあるある!とか、なんだか言葉にできなかった気持ちを表現してくれてる・・・。心の底に沈んでいた(青春の時代の)澱をじんわりと浮かび上がらせてくれる、そんな一冊だと思います。
かしこくも とくすることも ないけれど じんわりしたよ ほ-むらひろし
(徹夜本と映画で現実逃避!作 笑)