心温まる素敵なお話です。人を信じて、どんな時も前向きに!(漁港の肉子ちゃん/西 加奈子)
西加奈子氏の小説は今回初めて読みました。本作はいろいろな方が、彼女の代表作として挙げていることもあり、かねてから読んでみたいなぁ、と思っていた1冊です。
「肉子ちゃん」
こんな風に人に呼ばれたら、普通は名誉棄損レベルで激怒ですよね・・・
「肉子ちゃん」という名前の響きは、もうそれだけで相当に強烈なので、読者は一体どんなキャラなのだろうか?と読み始める前に想像逞しく想いを巡らせると思います。で、これがまた不思議なのですが、主人公である肉子ちゃんは、その激しく逞しくして想像したイメージとなんとなくダブる(まさにイメージ通り?)そんなキャラなのです。そう、彼女は大きくてまん丸い・・・。
ただし、そんな事はすぐ忘れてしまう程、彼女は深く、縦横無尽です。口癖、いびき、大阪弁、他にもありますが、本当に見事な著者の描写で、彼女のキャラは、読む程にその体型と同じくどんどん肥大化して行きます。
それ以外にも、出てくる人は、皆、きらりと光るキャラの持ち主ばかりで、話しに更なる彩りを添えます。
本作はそんな人達が、さびれた小さな漁港で生き生きと紡ぐ物語であり、同時に主人公である、“キクりん”の目を通して、極めて特徴的な母親 “肉子ちゃん”を語らせ、彼女自身が女の子から少女へと成長する、その過程を描いた、ほろ苦くもあったかい作品となっています。
本当かどうかは判りませんが、本作の表紙の絵は、クリムトの ダナエを作者が模倣して書いたものだそうです・・・。メッチャ上手ですね・・・絵も玄人裸足・・・。あ、作家は玄人でした。(笑)