徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

全然華麗でもなんでもないお話・・・(マネー・ショート)

マネー・ショート華麗なる大逆転 (字幕版)

マネー・ショート華麗なる大逆転 (字幕版)

2007~08年の金融危機を描いた作品で、前からいつかは見ようと思っていた1本です。何といっても、出演者が豪華です。クリスチャン・ベイル、スティーブ・カレル、ライアン・ゴスリング、ブラッド・ピット!しかもセレーナ・ゴメスとマーゴット・ロビーカメオ出演のオマケ付き! 

この手の映画、本当にいつも思うのですが、なんなんですかね・・・この邦題?「マネーショート、華麗なる大逆転」って・・・。一般的に「マネーショート」って金が足りない?ってことですよね? で、「華麗なる大逆転」と云うのも全然この映画の内容を反映したものになっていない気がします。この出演者で華麗なる大逆転なんて題名だと、なんだか知らない人はこの華麗な4人組が最後に大勝利する詐欺師の映画かなにか?と思ってしまうのではないでしょうか?(そうやって引っ掛けて、動員を増やすのが狙い?笑)原題はTHE BIG SHORTで金融用語で言うと巨額な空売りと言う意味だと思います。ちなみに反対はLONGでこれは購入とか保有を指すそうです。

クリスチャン・ベール、スティーブ・カレル、ライアン・ゴスリング、ブラッド・ピット、4者4様の演技を見せてくれますが、ステーブの狂信的な演技とブラッドのもの静かな演技の「動 vs 静」は実に見応えがあります。同じものを見て、同じように感じている二人にも関わらず、ここまで表現方法を変えて演出する監督の手法は見事だと思いました。(特にブラッド・ピットは、普通なら滲み出てしまうスーパースター/ブラッド・ピット色を一切消しているような本当に控えめの演技でビックリしました。)そして、ひたすら耐える天才を演じるクリスチャン・ベールとクールな演技で変な髪型のライアン・ゴスリングが脇を固めます。

クリスチャン・ベール演じるマイケルは医学博士で少々風変わりな投資家。投資のデータを眺めているうちに、超優良と言われている証券の中にサブプライムローンが含まれていることに気付く。サブプライムローンは所謂、低所得者向けの住宅ローンのことでマイケルはこれが数年以内に債務不履行となると予測する。そして「クレジット・デフォルト・スワップCDS)」という損失補填保険のような金融商品投資銀行に売り込む。超優良証券の為、債務不履行になるなど露ほども疑わない投資銀行はマイケルを鼻で笑い、保険料だけで濡れ手に粟とそれを引き受ける。その動きに気付いたライアン・ゴスリング演じる銀行員のジャレド。彼は取引先のヘッジ・ファンドのマーク(スティーブ・カレル)にもこの話を持ち込みCDSの購入を勧める。また、投資の世界に入ったばかりのチャーリーとジェイミーもサブプライムローンのからくりに気付き、投資銀行に話を持ち込むものの全く相手にされず、近所に住む、既に引退している元銀行員のベン(ブラッド・ピッド)に相談に行く。

マイケルの予測通り、住宅バブルは崩壊。資産価値が暴落するも、サブプライムローン絡みの証券はなかなか値段を下げず、保険料ばかりが出て行き、投資家達は金を返せ、訴えてやる、と騒ぎ始める。「投資家を保護するために、金は返さない。」と、一方的に彼らにメールを送り、一切その訴えを無視するマイケル。

が、遂にサブプライムローンを紛れさせていた超優良証券も暴落。一気に莫大な運用益を出すマイケル。そしてその莫大な運用益を彼らに淡々と且つ一方的に送金。その上で、あまりに因果なマネーゲームに嫌気が差しファンドを閉鎖する。

また、チャーリー、ジェイミーも一気に大金持ちに・・・浮かれる二人にベンはこれによって、善良な市民が職を失い、家を失い、年金を失い死ぬことになる、それを考えたことがあるか!と強く諭す。

ジャレドは批判があるのは判っているが、と前置きした上であくまでクールに儲けを受け取り、マークはベンが言っていたように、何も罪のない人が、ほぼ騙されたような形で自己破産、不幸のどん底に転がり落ちて行くことを知っている故に、これを売ったら俺たちも人々を騙した、金融機関の奴らと同等になると最後まで迷う。が、最後は部下から説得され、遂に債権を全部売り払う。

結局、影響が大きすぎて潰せないという理由で、投資銀行公的資金を大量注入され、多くはそれが幹部の巨額な退職金に化け、罪もない一般市民だけが、家を失い、職を失い、年金を失い、貯蓄を失い、ツケを擦り付けられるという悪夢のような結果に・・・勿論、詐欺まがいのことをした格付け機関を含む金融機関の人間は一人も司直の手に委ねられることもなかった・・・。

 名誉ぐらいは失ったかもしれませんが、まさに金を持った者だけが守られ、損をするのはいつも罪のない一般の人々ばかり・・・という作品です。

一部脚色はありますが、これは決してフィクションではありません。実際に2007~08年にこういったことがおき、未だ傷も癒えないのにも関わらず、ウォールストリートはまた同じような事をしようとしているそうです。

今はコロナでそれどころではない筈ですが、こんな時にも大儲けしている人達はいるようで・・・。 

frikandel.hatenablog.com