徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

あっという間に、億単位の金が消えていく。あなたは金融の地獄を見る。(リーマンショック・コンフィデンシャル/アンドリュー・ロス・ソーキン)

f:id:Frikandel:20200130225520j:plain

年末から年始にかけて、暫くブログが滞ってしまった。つまらん仕事のせいもあるのだが、一因はこの本にある。

もの凄く面白い本であると同時に凄く面白くない本というのがあればまさにこの本だと思う・・・。

読むのに手間取り、何度も挫折しそうになりながら、足掛け2年、やっと読み終えた。(笑) 

本作はいわゆる2008年に投資銀行であるリーマン・ブラザーズの経営破綻から発した金融危機のことを書いたものだが、兎に角、取材範囲が凄くて、当時の様子が手に取るように判る。自身の保身の為に、会社をなんとか残そうというスノビーなエゴの塊達と、世界レベルの経済破綻を防ごうとする政府の面々の凌ぎ合いが凄く、その様子がつぶさに書かれている。

巨大というだけではなく、どんどん膨らんでいく損失。何度も匙を投げそうになる関係者達。最初は公的な介入はしないと極力距離を置いていた政府が「大き過ぎて潰せない」と遂に公的資金をつぎ込むことを決める。資本主義の原則によれば、そういった者は市場から淘汰されなければならないにも拘らず、公的資金の注入によって、仕事や巨額な退職金を保証される金融Executive達。まさに「強きを助け弱気を挫く」ように見える政策に当然議会は反対、混乱を極めていく。(ちなみに邦題はリーマンショックになっていますが、これは和製英語らしく、この「大きすぎて潰せない」“TOO BIG TO FAIL”が、この本の原題になっています。)

これを読んで思ったのは、アメリカの上位の金融機関は、兎に角金、金、金とGreedyで一見凄まじい競争はしているが、持ちつ持たれつの部分がかなりあり、一旦こういった事例が起こると連鎖反応が起きて結構弱いということ。(まぁ、多かれ少なかれ経済というのはそういうものなのかもしれませんが・・・。)また、同じプレイヤーが政府含めてグルグル回っていて、なんだか本当に一部の金融Executiveだけがその恩恵に預かっているように見えるということ。(例えば、本作の主人公の一人と言ってもよい、ヘンリー・ポールソン財務長官は元ゴールドマンサックスのCEO)

当時、あんな一般庶民を嵌めたような鼻もちならない奴らを助ける必要があるのか!と凄まじい議論が起こったのは想像に難くないが・・・。しかし、だからと言ってそれを放置しては、逆にそういった一般市民に影響を与えてしまうと信じ、何度もブレながらも踏ん張る強権なアメリカ政府。なんだか日本とは全然様子が異なるなぁ。と強く感じた次第。 

いや~、とっても面白そうじゃない?と思われるかもしれませんが、そりゃ確かに面白いです。ただし、読むのは知識がないと結構大変です。アメリカの金融は日本とは形態というか呼び方がかなり異なっているため、そういう方面の知識が薄い自分にとってはかなり理解するのに時間がかかってしまいました。

そもそも投資銀行と普通の銀行の違いは何?から始まって、なんで保険の大手や証券会社まで出てくるの?とか、連邦住宅抵当貸付公社(Freddie Mac)、連邦住宅抵当公庫Fannie Mae)って何?なんで同じようなのが二つもあるの?連邦準備制度理事会ニューヨーク連邦準備銀行連邦預金保険公社、ってあるけど、普段何をしているの?その管轄は?

それに加え、似た様な英語の名前の人がわんさか出てきて、しかも、会話のところはニックネームになったりして、都度、これ誰だっけ?と調べなくてはなりませんでした・・・。普通巻頭にそういうの付けとくだろう!!とブツブツ文句をいいながら、上巻を読み終えたのですが、なんと巻末にそれが付いていました・・・。おせーよ!!(泣) 

とそんな訳で、冒頭に「もの凄く面白い本であると同時に凄く面白くない本」と書かせて頂いた次第です。

しかしながら、金融の歴史という観点からすると、本書はとてつもなくピカイチな一冊だというのは間違いなく、数々の賞を受賞したのも理解できます。お金が好きな人は是非一読をお勧めします。 

早くもコロナウイルスで景気の雲行きが怪しくなっています。これが、新たなリセッションの入り口にならないといいですね・・・。