徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

力道山に負けた史上最強の柔道家。人生って本当にいろいろ。正解なんてない。・・・・(木村正彦はなぜ力道山を殺さなかったのか/増田 俊也)

木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか

強過ぎるがゆえに、周りがほっておかず、奥さんの薬代を稼ぐと云う口車に載せられ一時期プロに転向。それが影響し、未だに柔道界からほぼ抹殺されている、最強且つ不世出の柔道家、木村正彦氏。彼の一生を18年間愚直に追いかけた秀逸の一冊です。

内容にも、木村政彦という人間にも、ただただ圧倒されました。 

運動界のスーパースターというのは、どんなに無理を重ねても怪我をあまりしない人ではないかなぁ、と最近良く考えます。

なんでも鬼のように練習をすれば、人間、ある程度までは到達できると思うのですが、普通の人間は、鬼のように練習すると、体が耐えられず、大抵故障するようにできていて、そのレベルの練習は続けられません。続けられる、つまりオーバーワークしても壊れない人間にのみ、スーパースターへの道が開かれているのではないでしょうか? 

木村氏はそんな人間でした。兎に角、稽古、稽古。全盛時の稽古時間は一日10時間を超えたそうです。大木に帯を巻いて一日1000回打ち込みをした結果、その大木を枯らしてしまったという逸話はあまりにも有名です。その甲斐あって、公式戦は15年間無敗。「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」という言葉が今も語り継がれている位最強の柔道家でした。 

強すぎるがゆえの孤独・・・。慢心もあったのかもしれません。不遇への不満から、かつてタッグを組んでいた力道山にハメられ、その後力道山はスーパースター、木村は表舞台から姿を消します。あまりにも対照的な二人の人生。

そんな木村氏の人生を筆者が熱い敬愛の情を持って語ります。最後は涙なくしては読めませんでした・・・。

700ページという長編ですが、夢中になって厚さは忘れ、最後は、「まだ終わらないでくれ!もっと読みたい!」と思える一冊でした。