「どりこの」って何????・・・(伝説の「どりこの」/ 宮島英紀)
表紙って実は大切だったりします。
「どりこの」
これは昭和6年(西暦1931年)から19年頃に一世を風靡した飲み物だそうです。勿論、自分はこの飲み物の存在を知る世代ではないですが、この表紙と、奇妙な題名に惹かれて思わず手に取ってしまいました。
昭和6年から19年というと日本が、急速に力をつけて、対外的に存在感を示そうとやっきになっていた時期であり、不幸にも戦争に入ってしまった頃です。
そんな頃に、毎年100万本近く、13年で合計1061万7201本を売り上げた「どりこの」。(当時の人口は6,500万人から7,000万人)本作はその謎の飲み物の実態に迫ります。
発端は筆者が、田園調布にある奇妙な名前の坂「どりこの坂」の由来を調べるところから始まります。そこで、「どりこの」が希釈する形の飲み物だった事を発見します。同じような飲み物と言えばなんと言っても「カルピス」が有名ですが、カルピスは大正8年(1919年)に既に発売されているので、「どりこの」それよりはかなり後に出た飲み物になります。カルピスが滋強飲料であれば「どりこの」は高速度滋養料。なんだかこれだけ聞くと所謂バッタもののようにも聞こえてしまいますが、物流がまだそこまで発達していなかった時代の年100万本ですから、そうではないことは明らかです。カルピスは400mlで1円60銭、「どりこの」は450mlで1円20銭。微妙な価格設定からもカルピスという王者に迫ろうとしている心意気が感じられます。筆者によると当時は小学校の教員給料が月50円、喫茶店のコーヒーは10銭とのことなので、「どりこの」は現在の価格にすると、5,000円から6,000円位とのこと。(高い!いいワイン買えますね・・・)驚くことに、販売元は何故か出版社業界の雄である講談社。何故、講談社が飲料を売っていたのか?当時の宣伝方法など、貴重な資料と共にその謎が明らかにされていきます。
歴史に埋まってしまった、ニッチな商品の歴史を謎解く、トリビア欲を満たしてくれる一冊です。(講談社に保存してあった、当時の「どりこの」を筆者が飲んでしまう箇所など、鳥肌ものです。笑)