徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

現代の真の愛の形は、皆が考えている普通からはもう生まれないのかもしれない・・・(きらきらひかる/江國 香織)

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江國香織氏は既に文壇の重鎮と言ってもよい方だと思いますが、辻仁成氏と男女対になって書いた『冷静と情熱のあいだ Rosso』位しか、自分は読んだことがありませんでした。

今回「きらきらひかる」という題名から何故か目が離せなくなり、読んでみることに・・・。 

本作は、アルコール依存症で精神病気味の妻と同性愛者の夫の生活を描いた作品です。(同性愛者をゲイと書かずにホモと書いているところに時代を感じますし、30年近く前にこんな小説を書いていた著者はやはり凄いとしかいいようがありません。1991年刊行)

生物学上の性では相容れることができない二人の、深く愛し合うがゆえの感情の揺れが見事に描かれています。

同性愛者を好きになってしまったアル中で精神病気味の妻。その妻を深く愛し、どこまでもやさしい夫。しかしながら彼は妻を抱くことができない上に昔から付き合っている恋人が・・・。

お互いに、相手の特異な部分まで含めて深く愛している筈なのに、全てを何故か上手く共有できない、そんなもどかしさが、作品から滔々と伝わってきます。そこにイラつき、妻は故意に残酷な言葉を夫に投げつけ、夫はそれが理解できるだけに更にやさしくなって行く。結果、お互いがしてしまった事に深く傷つく・・・。純粋ゆえの残酷なスパイラル。

また、彼ら二人だけの世界であれば、きっと完成していたであろう愛の形も、社会通念という壁に度々阻まれ、それにも彼らは深く傷つき疲れ果てて行きます。

長年連れ添った夫婦が、相手の存在に何故かイライラして、売り言葉に買い言葉で喧嘩をする、のとは訳が違います。 

物語は、お互いに傷つけ合い、それを度々修復しながら、自分たちは、自分たちなりの愛の形しか示せない、そうやって生きて行くしかないのだ・・・。真の愛とは常に不安定だけど信じて行くしかない、云々と夫が悟るところで話は終わります。 

なんだか、羨ましいような、眩しいような、そんな複雑な気持ちになりましたが、「こんなにピュアにならないといけないのであれば、残念ながら自分には真の愛を紡ぐ資格は全く無いなぁ」とひとりごちるのが精一杯でした・・・。(哀) 

ちなみに、作者はこの題名を、入沢康夫という詩人のキラキラヒカルという作品から取ったそうです。その作品があとがきに引用されていましたが、その詩からも自分は目を離せなくなりました。ちょっと興味を持ったので、近いうちにその詩集も読んでみたいと思います・・・。見た目も、音も綺麗な詩ですよね・・・。(横に読みます・・・。しかしよく見ると・・・笑)

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