徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

奥さんがAVに出演していました・・・そこから始まる悲劇。(あるフィルムの背景/結城 昌治)

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結城昌治氏、自分に取って初見の作家さんでした。最近の自分は、読みごたえがないという理由のみで、あまり短編集は読まないのですが、結論から言うと本作は珠玉の作品が詰まっており、非常に満足の行く一冊でした。

この結城氏の作品は必ずと言っていい程、人が死にます。事故だったり、ある時は殺人だったり、自殺だったり・・・。にも拘らず、物語は実に淡々と進みます。勿論悲しみはそれなりに表現されていますが、どちらかと言うと事務的に取り扱われていて、阿鼻叫喚なんていう字とは全く無縁です。無機質な感じ?とでも言えばいいのでしょうか?

ただし、一作一作にひねりが聞いていて、逆にそれが不気味さや恐怖感を煽っている気が致します。

本作に収録されている作品は全部で13話。

第1部

【惨事】

憧れていた男性に乱暴され、何もかもが上手く行かなくなってしまった女性。彼女の心がふと揺れた時、何が起こったのか?

【蝮の家】

常に相手を出し抜き、なんとか財産を取られずに、または財産を取って、離婚しようとしている医者夫婦のお話。どちらが上手くやったのか?

【孤独なカラス】

カラスと云う仇名の孤独な少年が住んでいる街で起きた幼女惨殺事件。中々犯人を上げられない警察が最後に捉えたのは?

【老後】

旧家の放蕩息子に乱暴され、結婚することになったが、酷い扱いをされ続けて笑わなくなった老婦。何故、その老婦が最近微笑を見せるようになったのか?

【私に触らないで】

自分の人生は平凡すぎてつまらないと常に思っている歯医者にふと差した魔。結局、歯医者はどうやって平凡な自身の生活に別れを告げたのか? 

【みにくいアヒル

器量が悪い主人公は、それなりに人生を乗り切って行こうと努力していたが、ある時、静かにキレる。その結果彼女に芽生えた思いとは・・・。

【女の檻】

やっと逆玉の輿に乗るチャンスが訪れたものの、昔から付き合っている腐れ縁の女がいる為にそれも叶わず悶々とする男。そんな時に起きた殺人事件。何か関係はあるのか?

【あるフィルムの背景】

この本の表題になっている作品で、恐らく一番有名なものだと思います。

主人公は裁判官。美しい妻と二人暮らしの何不自由ない生活。が、ある時、証拠のポルノビデオの中に、妻そっくりの女性が出演しているのを見つけます。他人のそら似と自身も思い込むようにするものの、妻に何気無く確認をいれてしまう主人公。そこから始る悲劇。一体何が起きたのか?

第2部

【絶対反対】

オリンピック道路建設の為に、立ち退きを迫られている独居老人の話。彼は何故そこまで反対をしているのか?やがて判るその驚愕の事実・・・。

【うまい話】

金持ちの家に強盗に入ろうと誘われた二人。が行ってみると何か様子が異なる。何か起きそうな予感がビシビシとしてくるが、一体何が起きたのか?

雪山讃歌

雪山で不自然な行動をする男を見つけた主人公は・・・。果たしてその男は一体何をしていたのか?

【葬式紳士】

社内のライバルをあっちの世界に葬り去ってくれる、殺し屋のお話。

【温情判事】 

「罪を憎んで人を憎まず」を、実践している判事。そんな判事の妻が殺人事件に巻き込まれる。怨恨など全く身に覚えは無い為、通り魔の線で捜査するも、該当者は全く見つからず。そんな時に浮かび上がって来た真実とは・・・??

 

多少の差こそあれ、本著は傑作選ですから、それぞれ、とても面白く、夜を徹して直ぐに読んでしまいました。

感覚としては連城三紀彦氏とか米澤穂信氏に似ているかもしれません。もっとも結城氏は1927年生まれ(96年に亡くなっている)、連城氏も1948年生まれ(やはり2013年にお亡くなりになっています。)米澤さんは1978年生まれの現在41歳なので、活躍する、またはしていた年代がそれぞれ相当に異なっています。よって、互いに関係はほぼ無いと思いますが、接点位はあったのかなぁ。 

思いっきり非日常の世界にお浸り下さい。