ルポルタージュのお手本のような一冊・・・(それでも彼女は生きていく 3.11をきっかけにAV女優となった7人の女の子/山川 徹)
それでも彼女は生きていく 3.11をきっかけにAV女優となった7人の女の子
題名の通り3.11をきっかけにAV女優になった7人の女性のことが淡々と書かれています・・・。(正確に言うと、3.11をきっかけに復帰した人もいますが・・・)
東日本大震災は日本が今まで経験したことのない原子力を含む大規模な災害であり、今もその爪痕が深く残っていることは頭では理解していますが、大震災の影響でAVというのは、全く自分の中では今まで繋がりませんでした。
筆者は震災後、戦前に東北地方に多かったと言われる「口減らしのため、娘を身売りする」ような事態が起きているのかも?と想像しますが、取材を重ねていくうちに、そういった、戦前の状況とは何か違う雰囲気を感じます。勿論、皆、一様にお金に困り、仕事に困り、「震災がなければAVの道を選ばなかった」と言ってその世界に入って行くのですが、いくら読んでも震災とAVの間の因果関係が本作からは強く浮かび上がって来ません。そこに、本作の題名「それでも彼女は生きていく・3.11をきっかけにAV女優となった7人の女の子」との違和感を読者は覚えると思うのですが、筆者は敢えて、その因果関係を深く追うこともなく、また否定もしません。自身の勝手な思い込みを押し付けることなく、その判断を読者に委ね、筆者は淡々と取材した彼女たちの言葉を唯一の事実として文章にして行きます。そういった意味で、本書は非常に秀逸なルポルタージュだと思います。
大震災とAVの道に入ったことに、実はそこまで深い因果関係はなかったのかもしれないけど、何かしら思うことがあって、それぞれ踏ん切りをつけてAVという世界に飛び込んだ。彼女達の云う事、それのみが事実だし、結果的にそれが事実になる、そういうこともあると思います。事実は結局のところ、本人にしか決して判ることはなく、外野は常に想像でしか物を語れません。
決して読んだ後に明るくなるような作品ではないですが、本書は、こんな時代に生きる、どこにでもいる普通の現代女性の意識を鋭く切り取った一冊だと思います。