徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

強烈な暴力により、潰れる頭蓋骨や剥がされる爪。そんな身の毛もよだつ状況の間にふと訪れる、つかの間の平和。そんな時だからなのか、そこに供される、極上の料理の数々が鮮明なイメージとなって浮かび上がってくる。(ダイナー/平山夢明)

ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)

グロいから要注意と言われながらも、かなり前から、目をつけていた本。 

「俺はここの王だ。ここは俺の宇宙であり、砂糖の一粒までが俺の命令に従う。」

 読み始めて暫くしてこのフレーズで、あれ?この本って、この前やってた藤原竜也主演の映画の原作だったの?ということに気が付いた・・・。 

しかし、読み進むほどに、こんなの映像にできるの?という疑問ばかりが浮かんだ。とにかく描写がグロい。暴力、暴力、暴力。「脳漿をぶちまける」みたいな表現が日常茶飯事に出てくる。いくら蜷川実花氏が監督でも、この世界観は無理だろ・・・。でも、ひょっとして???と、思って調べたけど、「残念」と言うか「やっぱり」と言うか酷評しかされていなかった。そりゃそうだよね、映倫通らないよね・・・。(漫画もチラ見しましたが、原作ほどのインパクトはやはりないですね・・・。)

主人公の一人はボンベロという、殺し屋だけを相手にした会員制ダイナーのシェフ。とにかく料理が芸術的。口調や雰囲気から、自分は、ワンピースのサンジを思い浮かべてしまった。もう、そのもの。(笑)

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前述の通り、とにかく暴力の表現がグロい。特に読み始めは慣れないこともあり、閉口するけど、(映像じゃないけど、「顔を背けたくなる」っていう表現がピッタリ来る。)対比的に出てくる、ボンベロの調理する料理が、本当に旨そうで、前半過ぎるとグロさには慣れるのが不思議。よくそんな中で、料理が旨そうなんて思えるね?っていう疑問はあるかもしれないけど、背景がグロ過ぎるゆえに、ボンベロの芸術的な料理がとにかく引き立つ。血なまぐさいけど清潔な手術室のようなダイナーで味わう、肉汁滴るハンバーガー。こうやって文字にしてしまうと、なんだかおどろおどろしい感じもするけど、読んでいると、口の中に唾液があふれてくるだけでなく、匂いまでしてくるような気になるから不思議だ。野菜のシャキシャキ感、肉の歯ごたえ、鼻に抜ける香り、ほとばしる肉汁。そんな感覚が色や湿気を持って、自分の五感に訴えてくる。作者である平山氏がそれを狙ったのかどうかは、判らないけど、強烈な暴力により、潰れる頭蓋骨や折れる上腕骨、剥がされる爪、引き抜かれる髪の毛、削げる皮膚、えぐり取られる筋肉。そんな身の毛もよだつ状況の間にふと訪れる、微妙な緊張感を残した、つかの間の平和。そんなタイミングだからなのか、そこに供される、極上の料理の数々が対比され、逆に鮮明なイメージとなって浮かび上がってくる。

出てくる人物は(犬まで!)、皆超キャラが立っており、読者は、あっ!という間に奇想天外な平山ワールドに引き込まれること間違いなし。監禁されている、もう一人の主人公であるオオバカナコと共に、読み終わるまで、あなたはこのダイナーから抜け出ることはできない! 

人を食った名前のオオバカナコは事務用品問屋に勤めるOLで手取り12万、そのうち家に4万入れて生活している。何の希望も夢もなく、海外の美しいリゾートで死ねたらいいなぁ、と漠然と思い、単発30万円の運転手バイトに応募。あれよあれよという間に採用され、仕事の最中に、意味も分からず、敵対者として捕らわれ、一味と共に凄まじいまでの拷問を受ける。頭をシャベルで砕かれる寸前に、謎の男に買われ、ボンベロという雇われシェフがやっている会員制ダイナーのほぼ奴隷同様のウェイトレスとなる。

オオバカナコの前に、同様のウェイトレスが8人いたが、全員、客もしくはポンペロに殺されており、彼女もすぐに9人目となるだろうと言われる・・・。オオバカナコの監禁され時間の観念のない中での延命生活が始まる・・・。果たして彼女は生き抜くことができるのか・・・?

ダイナー (ポプラ文庫)

ダイナー (ポプラ文庫)