徹夜本と映画で現実逃避!

現実逃避して、しばし嫌な事忘れましょ!

読了後、なんで、こんな最高のエンタメ書く小説家を今まで全く知らなかったのかなぁ、他に作品も聞いたことないし・・・。なんて思っていたのですが・・・(虐殺器官/伊藤 計劃)

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ネットで「これは紛れもない徹夜本!」という記述を見て、早速購入。

著者の名前は初見。そもそも、名前が読めない・・・。(笑)振り仮名も無いし、なんなんだ?と思いきや、下にPROJECT ITOHと小さく書いてある。PROJECT? え、これで計画って読むの?と思って調べたらビンゴでした。(一応ちゃんとIMEでも変換されました・・・「劃」。無知ですみません・・・。)

「な、なんか、かっこいいペンネームじゃないか・・・。」と途端に襟を正して読み始めた次第です。(笑)

                                                                                     

主人公は、クラヴィス・シェパード、アメリカ情報軍の大尉です。日本人の小説なのにいきなり外国人が主人公?という点で若干面食らいましたが、読み進めるうちに気にならなくなりました。 

9.11以降、先進国は人々の支払い、移動の全てを認証し、徹底的な管理体制を敷くことにより、テロを一掃していました。しかしながら、発展途上国では、逆に紛争、テロ、虐殺などが急増しており、アメリカ軍は都度、その対応に追われていました。主人公のシェパード大尉が、その対応(対応とは要するに主導者の暗殺なのですが・・・。)に当たります。次々と任務を進めるうちに、紛争や、テロ、虐殺の陰には必ずと言っていい程、一人の男が存在していることが浮かび上がります。しかしながら、その男はいつも、間一髪で逃走。なかなかシェパード大尉は彼を捉えることができません。

「彼は一体誰なのか?」

明らかになる、衝撃の事実。そして、最後にシェパード大尉の取った行動とは? 

まさに徹夜本にふさわしいSF大作でした。

話の内容は勿論ですが、この作品は単なるサイエンスフィクションとしては収まりきれない面白さがあります。著者の世界観、倫理観、宗教観、想像力、どれをとってもスケールの大きさが桁違いです・・・。

唸った箇所は沢山あるのですが、特に、AIの事を記述した以下のくだりは思わず二度読みをしてしまいました。

「皮肉なことに、人間の脳の研究が進めば進むほど、人工知能の研究はジリ貧になっていった。生身の脳の精巧さ―――というよりは冗長度を、コンピューターで再現することは皆がとうの昔にあきらめている。依然として戦場では、人間にしかできないことがあまりに多すぎた。(中略)人間の兵士な高価な部品だ…。」云々 

本作は本当に全てが完璧!最高のエンタメ!と手放しで褒めたいところなのですが、一点だけ・・・。

描写が正直リアルすぎます。当然、作品内では沢山の人が死ぬのですが、あまりにその描写が凄すぎて、都度映像が頭に浮かんで来てしまうのです・・・(泣)まさに、「ハクソーリッジ」とか「ランボー最後の戦場」を見ているようなグロさ・・・。正直自分はその部分には相当閉口しましたが、それさえも、著者のとんでもない実力の一環だと考え、なんとか最後まで辿り着きました・・・。 

frikandel.hatenablog.com

読了後、「なんで、こんな作家を今まで全く知らなかったのかなぁ、他に作品も聞いたことないし・・・。」なんて思っていたのですが、解説を読んで初めて、既に亡くなっていらしゃることを知りました。デビューからわずか2年ほどで、34歳の若さでお亡くなりになったそうです。ご自身の命を削って作品を生み出していたことを知り、あらためて、著者の凄さというか、作品に対する凄まじさに、心打たれました。 

なんと、伊藤さんはHatena Diaryに参加なさっていたようです・・・。

http://d.hatena.ne.jp/Projectitoh/20090107#p2

アエラの記事から

https://dot.asahi.com/aera/2015102900068.html

宮部みゆきをして、「私には、3回生まれ変わってもこんなにすごいものは書けない。」と言わしめた本作。ご興味があれば、是非、伊東計劃氏の世界を体験してみて下さい。(ちなみにアニメにもなっているようです。)