「そう来るか~!」のどんでん返し~!・・・(アルキメデスの大戦)
ファンの人には怒られるかもしれませんが、菅田将暉氏が何故こんなに人気があるのかが判りません・・・。まぁ、歌も下手じゃないけど、死ぬ程うまい訳じゃないし、そんなに二枚目でもないし・・・。が、この映画を見て、なんとなく彼の魅力が理解できたような気がしました。
兎に角、迫真に迫った演技が凄いです。長い台詞をしゃべりながら、黒板に一気に数式を描く姿とか、設計図が入手できない為に、実際に艦を歩測し熱にうなされた様に図面を書き上げていく様子は圧巻でした。國村隼、橋爪功や田中泯ら錚々たる俳優陣が脇を固めているのですが、彼の演技は彼らと比べても一歩も引けを足らないものだったと思います。
彼は、おそらく、あれですね、二枚目でも三枚目でも自由に演じ分けられる俳優さんなんですね・・・。正確にいうと、文句なしの二枚目なんだけど、三枚目に降りて来れる側の俳優ではなく、そんなにイケメンじゃないけど、役でイケメンを演じられる俳優の方。女優で言うと高畑充希みたいな・・・。そういう俳優さんはなかなかいないので、(最近、沖縄旅行で叩かれちゃった山田孝之氏は数少ないそういう俳優の一人だと僕は思っています・・・)今後、年齢を重ねて、若さを前面に出せなくなった時でも、そういう役を演じ続けられるかが勝負な気がします。
さて本作です。「数学で戦争を止めようとした男の物語」と宣伝にありますが、史実は実際には第二次世界大戦は起こってしまった訳ですから、頑張ったけど、止められなかった悲しい物語?・・・と想像していました。しかしながら、そんな物語ではなく、どちらかと言うと、最後の最後で「そう来るか~!」という大どんでん返しな作品でした。とは云うものの、そこは、やはり、戦争が絡んでいますので、200%すっきり!とはなかなかならないのが、儚いところです・・・。
1933年、日本は満州国の存続を認めない勧告を国際連盟より受け、連盟を脱退。将来の有事に備え、国力の増強を図る必要性に迫られる。
海軍の首脳は「これからは主戦場は航空機が戦力、よって空母が必要」と主張する永野中将、山本五十六少将の新進派とあくまで従来の方法にこだわり「巨砲を持つ巨大戦艦」を製造しようとする平山中将、嶋田少将の保守派に二分。空母の方が建設費用が高いこと、海軍なのだから、空ではなく、あくまで海にこだわりを持つべきということで、保守派が優勢。将来の見通しができない、頭の固い首脳陣に業を煮やした山本五十六はなんとか保守派の牙城を崩そうとするものの、守りが固く、巨大戦艦案の資料の一枚も入手できない。
そんな時に、永野と山本は東京帝大数学科の学生で、海軍に睨まれ、放校させられた、菅田演じる、櫂直(かいただし)とふとしたきっかけで出会う。櫂は後にノーベル賞を取ることになる京都帝大の湯川秀樹と双璧をなす天才との誉れ高い数学者。しかしながら、日本の政治、軍に嫌けがさし、アメリカ留学の準備中。類い稀な数字へのセンスに、「この男なら自分たちの計画を打開してくれるかも・・・」と考え、櫂を海軍へスカウトをする山本五十六。しかしながら、既に海軍にも嫌気がさしている櫂は勿論「うん」となど言う筈はない。山本五十六は話の最後に、軍の機密事項である戦争の可能性に触れる。一部の愚かな人間が決めた、下らない理由の為に、愛する人々が死んでしまうのは耐えられないと、それならば、自分が戦争を止めるために海軍に入ってやろうと、最後の最後で、櫂は考えを改める。立ちはだかる海軍の伝統、政治、嫉妬、やっかみ。そんな中、櫂は持てる能力をフル動員してそれを切り抜けていく。果たして彼は戦争を止めることができるのか???
数学となるとハードルが上がってしまって、難しい映画を想像するかもれませんが、本作はそこは非常に判りやすく描いているので大丈夫かと・・・。米ソで宇宙進出競争をしていた時代に活躍した黒人女性3人の物語を描いた「ドリーム」程は数字に踏み込んでいませんので安心してご覧ください。(「ドリーム」は、数学が判る人には判らない人の倍の面白さらしいです・・・。当然、自分は半分しか楽しめなかった派ですが・・・泣)
原作の漫画は映画とは少々異なっており、また別な面白さがあるようですので、いつかそっちの方も読んで見たいと思っています。